星空日誌「つぶやき」

TOA130+TOA645フラットナーとCMOSカメラの解像力

タカハシTOA-130とZWO社のASI2600MMProを使って、しし座の系外銀河を撮影したところ、思った以上に解像感が良いと感じたので、過去にMewlon-250CRSとSTL-11000Mで撮影した画像と比較してみました。



まず、TOA-130+TOA645フラットナーで撮影した画像です。M65の部分だけをトリミングしています(ほぼピクセル等倍)。画像復元などの処理は行っていませんが、銀河の暗黒帯の描写は良好です。



次に、Mewlon-250CRSとSTLで撮影したM65銀河の写真です。こちらの画像も先ほどと同じく、シャープ処理などは施していません。

2つの画像を比べてみると、Mewlon-250CRSの方が口径が大きく集光力があるため、暗い星がよく写っていますが、銀河の解像感のみに注目すると、そこまで大きな差は感じられません。

この理由としてまず考えられるのは、使用したカメラのピクセルサイズの違いです。

TOA130の撮影に使用したASI2600MMProのピクセルサイズは、3.76μmです。一方、STL11000Mのピクセルサイズは9μmと大きく、カメラの解像力に差があります。



上はカメラの1ピクセルを模した図ですが、ASI2600MMPに比べ、STL11000Mのピクセルサイズは大きいですね。ASI2600MMPを2ビニングするより大きいです。

次に考えられる理由は、光学系の結像性能の違いです。TOA130に使用したTOA645フラットナーは、メーカーの発表によれば、中心部のRMS-SPOT直径は1ミクロン、φ30mmで2ミクロンです。



一方、Mewlon-250CRS直焦点の具体的な値は発表されていませんが、スポットダイアグラム図を比較すると、TOA645フラットナーより星像が一回り大きいことがわかります。

その他に、気流の良し悪しも解像力に関係してくるでしょう。一般的に屈折望遠鏡の方が、気流の影響を受けにくいと言われており、その点、TOA130の方が有利だと思います。

今回はSTL11000MとMewlon-250CRSの組み合わせと比較したものですので、Mewlon-250CRSにASI2600MMPを取り付けた場合と比べれば、また結果は異なってくると思います。

ただ、焦点距離2500ミリを超える望遠鏡の解像力を最大限に生かせるような撮影条件の日は、日本ではなかなかないので、今回の比較結果を考えれば、TOA130とセンサーサイズが小さなカメラ(ピクセルサイズも小さなカメラ)を用いて系外銀河を撮影するのが、歩留まりがよいかなと個人的には思います。

また、Mewlon-250CRSとASI2600MMPで撮影することがあれば、画像を比較してみたいと思います。

TOA130のフォーカサーを交換

タカハシ TOA-130の接眼部(フォーカサー部分)を、Starlight Instruments社の3.5インチフェザータッチフォーカサー(Feather Touch focuser)に交換しました(下写真)。



元々、私が使用しているTOA-130はTypeS鏡筒で、径の小さなフォーカサーが取り付けられていましたが、FS-152と鏡筒径が同じだっため、FS-152の径の太いフォーカサーに交換して使用していました。

FS-152用のフォーカサー(下画像)は、TOA-130Fと同じでしたので、TOA130F用の67フラットナーも使えるようなりました。しかし、重いカメラを取り付けると、ドロチューブの行きと帰りでスケアリングが僅かにずれるのと、ロック時に対象が視野の中で動くことが気になっていました。



現行モデルのTOA-130NFBのフォーカサーには、スライドガイドが採用されており、このような問題も起きづらくなったと聞き、いっそ、鏡筒ごと買い替えようかと考えていました。そんな時、海外の天文ファンからStarlight Instruments社のフォーカサーを勧められ、購入に至りました。

まだ本格的な撮影には使用していませんが、フェザータッチフォーカサーのドロチューブの動きは本当に滑らかです。付属している減速微動装置の動きもスムーズで、スリップの発生も無さそうです。高価ですが、海外では愛用者が多いというもの、うなずける高精度の製品だと思いました。

参考までに、フェザータッチフォーカサーの写真をいくつか下記に載せておきます。



タカハシのフォーカサーとのドロチューブ内部の比較画像。ドロチューブ内径は、3.5インチフェザータッチフォーカサーの方が大きいです。フェザータッチフォーカサーの内部には、絞り環が設けられています。



接眼部の回転は、FSQ-106EDのように接眼体全体を回転させる方式。回転時の動きはスムーズで、光軸ズレは発生しませんが、タカハシの回転装置の方が手元で回転できて便利のように感じます。



ドロチューブの繰り出し長(トラベル長)は約114ミリ。タカハシ製よりもトラベル長が大きいので、延長筒を追加しなくてもフォーカスが出そうです。

TOA-130の光軸調整

気温が上がり、気流の落ち着く日が多くなってきました。良気流の夜を選んで、タカハシTOA-130の光軸を微調整してみました。

TOA-130の対物レンズには、EDレンズ2枚を含む3枚のレンズが用いられており、それぞれ間隔をあけて配置されています。そのため、光軸調整ビスは、レンズセルと鏡筒本体部を調整する3ヶ所のネジに加え、間隔を調整するネジも3ヶ所に追加されています。



レンズセル自体の傾き調整は、2枚玉屈折や、スズ箔分離式で3枚玉のTSA-120等と同じで比較的容易ですが、間隔を調整するための光軸調整ネジの調整が本当に微妙でした。

光軸調整器具のセンタリングスコープを使って光軸調整すると、必要以上にネジを動かし過ぎてしまい、結局、実際に星像を確認しながら調整する必要がありました。

最終的に、気流の良い夜に天頂付近の星を導入して、焦点内外像を確認しながら、レンズの傾きを微調整した後、ロンキー像を見て、球面収差が発生していないことを確認して終了しました。



光軸調整後のTOA-130の星像は、以前にも増してディフラクションリングが綺麗で、シャープに感じられるようになりました。光軸調整というと反射望遠鏡のイメージがありますが、やはり屈折望遠鏡も光軸を合わせておくことが大切ですね。

2枚玉アポクロマート屈折の可能性

タカハシから、2枚玉アポクロマート屈折望遠鏡のFC-100DZが発表されました。アポクロマートと言えば3枚玉、とこだわりを持っている方もいますが、FC-100DZは魅力的ですね。

FS-128

2枚玉と比べると、屈折面が多い3枚玉の方が、確かに性能向上を目指せます。しかし、鏡筒本体が重くなる点と価格が上昇する点が厄介で、個人的には、2枚玉アポが実用的で使いやすいと思っています。

レンズが大口径になると、温度順応にどうしても時間がかかります。3枚玉のTOA-130の場合は、数時間は外気に馴染ませないと、ピント位置がずれてしまいます。その点、FCやFSシリーズは温度順応が比較的早く、使いやすいですが、球面収差の補正は3枚玉には敵いません。

Agema光学望遠鏡

2枚玉で3枚玉に匹敵する望遠鏡があればと思っていたところ、海外の天文フォーラムを読んでいると「Agema Optics」というメーカーの望遠鏡に目が留まりました。メーカーの公式サイトを読んでみると、レンズの間隔を開けて配置した対物レンズを採用した2枚玉フローライト屈折望遠鏡のようで、従来の3枚玉アポを凌ぐ性能を有しているようです(タカハシFOA-60の大口径版のようなイメージでしょうか)。

価格は、口径13センチの「AGEMA SD 130」で、5900ドルですので、2枚玉アポとしては高価ですね。今の為替相場ですと、TOA-130NSと同じくらいの価格でしょうか。フィールドフラットナーレンズの仕様がよくわりませんが、撮影性能にも優れているなら、気になる望遠鏡です。

追記:中古機材販売ページにカメラレンズと電動フォーカサーを追加しました。お問い合わせいただければ幸いです。

Mewlon-250CRSの使用感

撮影機材のページに、タカハシMewlon-250のレビューページを新たに追加しました。今は春の銀河の撮影時期ですので、Mewlon-250CRSを撮影に持ち出すことが多くなっています。

Mewlon-250CRS

レビューページにも記載していますが、Mewlon-250CRSは、惑星観望から系外銀河の撮影まで、多目的に使える優れた鏡筒だと思います。重さも12キロと、口径25センチの天体望遠鏡にしては軽いと思います。

Mewlon-250CRSの価格は、3月1日より、720,000円から727,000円に見直されるようです。2010年発売当初の価格が70万円でしたから、また少し値上がりしてしまいます。手に入れるなら、今がチャンスかもしれませんね。

ビクセンの工場見学に参加

そろそろ撮影時期に入りましたが、天気が回復しません。日本列島の南海上には停滞前線が伸びており、梅雨の時期のような空が広がっています。早く、秋のスカッとした天気になってほしいですね。

ニコンミュージアムを見学した次の日、ビクセンのトナかい会員のイベント「ビクセン工場見学(ファクトリーツアー)」に参加してきました。

ビクセン

ビクセンと言えば、高橋製作所と並ぶ、日本の天体望遠鏡のメーカーです。天体望遠鏡の製造工場を見学できる機会はめったにないので、以前から参加してみたいと思っていたイベントでした。

上は、埼玉県所沢市にあるビクセン本社建屋です。この日、ビクセンの工場見学には6名の方が参加されていました。兵庫県から来た私が最も遠いだろうと思っていましたが、熊本県から来られた学生さんがいて驚きました。工場見学のイベントは人気があるのでしょうね。

本社の会議室でツアーやビクセンの歴史について説明を受けた後、本社の向かいにある工場に移動しました。工場内は工場長にご案内いただいたのですが、大変気さくな方でお話しやすく、赤道儀パーツの塗装工程から望遠鏡のレンズの組み込みまで詳しく教えていただきました。

ビクセン

上は、SXD2赤道儀を組み立てているところです。赤道儀は流れ作業で製造されているのかと思っていましたが、熟練の社員の方が、一つ一つ軸の回転のスムーズさを確認し、微調整しながら組み上げていました。これだけ手間をかけているなら、価格が高くなってしまうのも仕方がないかなと思いました。

下は、ビクセンR200SS望遠鏡の光軸調整をしているシーンです。遠く離れたところに設置した人工星を実視で確認して調整されていて、光軸調整前と後の星像を見せていただきました。このように見比べてみると、光軸調整の善し悪しは一目瞭然ですね。ところで、R200SSを載せている光軸調整用の台ですが、これは手作りだそうです。望遠鏡を台ごと微動できるようになっていて、便利だなと思いました。

ビクセン

この他にも、レンズの組み付けや最終仕上げの様子も見せていただき、素敵なお土産もいただきました。現地でお世話になった皆様、ありがとうございました。

ビクセンの工場内は想像していたより広く、全体的に明るい雰囲気でした。また、シフトの関係かもしれませんが、実際に作業されている方は、若い方が多いと感じました。ベテランから若い方へ技術が伝達されているのでしょうね。

タカハシの気になる広告

FSQ-85ED今月号の星ナビと天文ガイドの広告欄に、タカハシの新製品の予告広告が載っていました。天体望遠鏡のシルエットに「新たな伝説が生まれる予感・・・」との思わせぶりなキャッチコピーが書かれた高橋製作所の広告。いつぞやのビクセンのVSD100鏡筒の広告を思い出しました。

この近日発表予定の鏡筒ですが、鏡筒の太さからして、以前から噂になっているFSQ-130EDの可能性が大でしょう。実際、海外のサイトでは鏡筒の画像やスペックまで掲載されていて、ほぼ間違いない雰囲気です。FSQ-106EDの口径13センチ版がいよいよ登場するのでしょうか。

FSQ-130EDの価格ですが、海外のサイトによると、100万円を超えるという情報があります。これが本当なら、口径15センチのTOA-150Bとほぼ変わらない価格になります。ちょっと気軽には買えない価格帯ですね。個人的には、80万円くらいで販売してほしいところです。なにはともあれ、FSQ130EDの正式発表が気になりますね。TOA-130ユーザーとしては、FSQ130EDとTOA-130の比較写真を示して結像性能の違いを見せてほしいです。

満足度の高い望遠鏡の買い方

タカハシMT-160望遠鏡昔、天文ショップの誠報社で、「パーフェクト撮影セット」なる天体写真の撮影機材一式が販売されていました。価格は安いセットでも50万円前後。最も高価なものでは、200万円近くのものもありました。学生の頃、「こんな機材一式をスパッと購入できたら、どんなにいいだろう」と思いながら、広告を眺めていたのを覚えています。

しかし、最近、読んだ行動心理学の本によれば、一気に欲しいもの全部を買ってしまう行動は、手に入れた後は急激に満足感が薄れ、結果として満足度の低い買い物になってしまうそうです。購入した喜びに慣れてしまうことを、心理学では快楽順応と呼ぶそうですが、新しいものにすぐに順応してしまって、機材を手に入れた嬉しさが続かないということのようです。

逆に、機材を望遠鏡、赤道儀、カメラなどと小分けして、かつ期間をおいて購入していけば、順応した頃にまた新しい機材を手に入れるという変化が訪れるので、結果として、満足感が長続きするようです。

自分の場合に当てはめてみると、私が初めて購入した高橋製作所の機材は、EM-200赤道儀でした。今から考えるとおかしな話ですが、まずは赤道儀のみを購入しました(限定特価だったため)。赤道儀だけは何もできなかったのですが、初めてのタカハシ製品を手に入れたのが嬉しく、有頂天になったのを覚えています。

しばらくして、今度はメタル三脚を購入し、再びわくわくした気持ちになりました。三脚が手に入ったので、EM200に、その頃所有していた小さな反射望遠鏡を載せて、撮影を楽しみました。そして最後に、EM200に載せるに相応しい鏡筒、MT-160の中古品を購入しました。最初にEM200赤道儀を購入してから最後のMT-160鏡筒を手に入れるまで、2年ほどかかったと思いますが、確かに一気に全ての機材を買うよりも楽しさが持続したように思います。

そう考えると、天体撮影機材は大人買いするよりも、少しずつ揃えていく方が満足度が高いと言えるかもしれません。カメラレンズをお持ちなら、まずは赤道儀を購入し(三脚も要りますが)、カメラレンズで撮影を楽しみます。一通り季節の天体の撮影を終えたら、次にお目当ての天体望遠鏡を購入し、今度は望遠鏡で撮影するというのがいいかもしれませんね。もっと長い期間にわたって、購入の楽しさを味わおうと思えば、BORG望遠鏡のように、パーツを少しずつ買い足していくのもいいかもしれません。

EOS6DとビクセンSXD2赤道儀

ビクセンSXD2赤道儀今日はキャノンEOS6Dの発売日です。フルサイズ機で軽量小型ボディのEOS6Dは、35ミリフルサイズを身近なものにしてくれる気がします。実際に触ってみたのですが、EOS6Dはほんとに軽くて持ち運びしやすいですね。

また、今日はビクセンSXD2赤道儀の発売日でもあります。DCモーターからパルスモーターへと換装したSXD2赤道儀は、前人気も上々のようで、SXD赤道儀からの買い換え需要もあるようです。AXDとSXP赤道儀で定評のあるスターブックTENコントローラーが魅力のSXD2です。価格が上がったのは残念ですが、使い易い赤道儀になっていると思います。

ところで、このビクセンのSXD2赤道儀ですが、展示されているデモ機を触ってみてふと思ったことがあります。メーカーによれば、モーター等の電子部品以外は、ベアリング数や構造はSXD赤道儀と同じということですが、クランプフリーの動きの印象が異なりました。

SXD赤道儀では、引っかかるような重さを感じる時があったのですが、SXD2になってある程度の抵抗はあるものの、クランプフリーの動きが滑らかになっていました。これならバランスも取りやすそうな感じです。もちろん、上位機種のSXP赤道儀のような動きの軽さはないのですが、ある程度のテンションがあるのもいいかな、と思ったほどです。感じ方には個人差があるので私感ですが、SXD2赤道儀ではそういった部分も改良されたのではないでしょうか。もしSXDからSXD2赤道儀への買い換えを考慮されているなら、天文販売店に一度実機を見に行ってみてはいかがでしょうか。

MT-200接眼部の強化

MT-200接眼部お盆の時期が過ぎましたが、まだまだ暑い日が続いています。夜空の方は、結構晴れているようなのですが、タイミングを逃してしまって撮影に行けていません。今晩の天気はどうでしょうね。

写真はMT-200反射望遠鏡の接眼部を鏡筒内から写した様子です。冷却CCDカメラにパラコアを付けて撮影すると、よくガイドエラーが出ていました。きっと重いカメラを付けるので、接眼部が撓んでしまっているためだろうと思って、このお盆に接眼部周りを強化してみた様子がこの写真です。

今回変更した点は、接眼部を固定するネジを増やして6点止めにしたことと、1ミリ厚のアルミ板を使って裏打ちしたことです。素人仕事で見栄えは悪いですが、ドロチューブ部分を持ってみると、剛性感が上がったたことを感じられます。ちょっと手間が掛かりましたが、苦労の甲斐はあったと思います。

写真の裏打ちしたアルミ板は銀色ですが、この後に黒色スプレーでツヤ消し塗装しています。ツヤ消し塗装には、お馴染みの黒色黒板スプレーを使用しました。秋の銀河も見頃になってきましたし、この強化したMT200望遠鏡で撮影するのが楽しみです。

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